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開廊展示 フライヤー表

ごあいさつ 開催趣旨 〜社歴とギャラリー開廊までの経緯〜

 銀座レトロギャラリーMUSEE(ミュゼ)にお運びいただき、誠にありがとうございます。ギャラリーを運営する川崎ブランドデザインは、九州を代表する建設会社、佐伯建設の持株会社として、昨年都内で独立を経て、今年で法人設立45周年、【創業から97年】を迎えることができました。

 創業の原点は、東京駅でお馴染みの辰野金吾が設計し、私の曾祖父が施工した 重要文化財 赤レンガ館(大分市)。その後、祖父による宇佐神宮 宝物館(宇佐市)、3年前に他界した前代表 川崎裕一 が指揮した大分市美術館(大分市)。そして藤本壮介さんの代表作HOUSE-N(大分市)とさまざまな美しい建築に関わり続けた97年間でした。

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 3代目代表 川崎裕一の逝去がきっかけとなり、私に事業継承する過程で、創業の地  大分を離れ、建設会社の経営から独立する判断を下し、2012年4月、社名、事業目的を変え、新天地・東京でブランディングに特化したマーケティングコンサルティング会社としてスタートさせました。

 その矢先、建築を愛するDNAに誘われて、東京銀座に残る一つの近代建築に巡り会いました。この小さな建物は、関東大震災の復興計画で昭和通りが整備された後、昭和7年に竣工されたもの。東京大空襲での戦災を生き延び、高度経済成長以後の不動産開発を逃れ、今日では銀座に残る希少な近代建築として、レンガ調の加飾タイルをそのままに、ビルの谷間に凛とした印象で佇んでいます。

 銀座・昭和通りという商業地にあるため、一旦解体し駐車場にせよという専門家のアドバイスのもと、HOUSE-N(大分市)でお世話なった建築家 藤本壮介さんによる新築ビル(川崎ブランドデザインタワー)を計画しました。ところが採算の課題が浮上し。昭和レトロを醸し出す素晴らしい建築の魅力に改めて気づき、保存・再生する決意をしました。解体工事を発注した矢先、ギリギリのところで撤回し、建物は保存されました。その後、私自ら毎日3ヶ月間現場に通い、改修工事を指揮し、2013年6月装いも新たにギャラリーとして再生させました。工事中は近隣の皆様に温かい声をかけていただき、この建物がいかに愛されていたか実感しました。

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 これまでの社歴を思い起こすと、創業の原点である重要文化財 赤レンガ館や、磯崎新さんの処女作として有名な大分市美術館アートプラザ(旧大分県立図書館)は1980年代に老朽化に伴い解体・建て替えが計画されました。単なる採算や機能性とどまらない、建築の本質を理解し、文化を醸成する価値、審美眼の観点から前代表が声を大にして保存を地元経済界に呼びかけ、地銀に訴えかけ、署名運動を行い、リノベーションさせ現在に残したという経緯があります。

 97年間の事業、総ての根底にはアートが存在しました。美しい建築、景観を愛する気持ちが、私にも引きつがれ、原動力となり、銀座で80年の歴史を刻んできた小さな建築が保存再生されました。「創造は破壊から生まれる。」建設という仕事に身を置いてきた4代100年を目前に、ごく当たり前に捉えてきた言葉を一旦飲み込んで、敢えて古い建物でどこまでできるか、「アートがつなぐ未来を見てみたい」そのような衝動に駆られました。

 この度の特別企画展は、3階建ての建築空間全てを利用し、 パルナシウス蝶 ▷ネオダダ風倉匠 ▷藤本壮介さんによるタワー建築という3つの領域を、根底に流れるアートが未来へつなぐ様を表現します。

 80年の歴史を刻む建築空間の中で、アーティストの皆様、ご来場頂くお客様と一緒に未来へ向けた作品を「共創」する小さな美術館(実験劇場)が完成しました。アートが人々の輪をつなぎ、人生が少しでも豊かな方向に向かうお手伝いができれば幸いです。皆様に親しまれる、これまでにない新しい価値観を持ったギャラリーを目指し努めてまいりますので、何とぞ格別のご支援、お引き立てを賜りますようお願い申し上げます。

 

川崎ブランドデザイン有限会社 代表取締役

銀座レトロギャラリーMUSEE(ミュゼ)共同代表

 川崎力宏

 

<展示1> パルナシウス蝶  川崎 裕一コレクション オランダ国立自然史博物館 特別展示 再現

 

Yuichi Kawasaki, the leading global researcher on Parnassius butterfly and former representative, donated his approximately 10,000 research collection to the Netherlands National Museum. The current exhibition not only recreates the Netherlands Special Exhibition in full-scale but also includes precious new varieties. Preserving the famed building in an effort promote the Kyushu economic community, the event will also introduce the milestone of building the gallery.

 

2010年11月22日09時06分59秒 九州を代表する建設会社 佐伯建設4代目社長として、九州経済界で活躍した川崎 裕一(かわさきゆういち)。日本青年会議所の九州代表を経験し、その後は地方都市のあり方を中心に、経済同友会をはじめ様々な提言を行なって参りました。オピニオンリーダーとして活躍した多忙な業務の間、日本蝶類学会会員として、自宅の一室にある研究室にて、プライベートで蝶類の研究家としての側面を持ち合わせていました。

 

 きっかけは、小学生1年生の夏休みの宿題で行なった昆虫採集、標本作成。趣味がエスカレートし、昆虫研究会が有名なことで志望、入学した慶応義塾大学在学中から、アジアを中心に渡航し、蝶類の採集、標本作成を手がけました。その後、欧州からヒマラヤ、日本、北米にかけて北半球の高山地帯にすむアゲハ蝶の一種である、パルナシウス蝶の分類学に専念し、ヨーロッパの博物館など世界各地から取り寄せた標本を調査、研究を精力的に行ないました。

 

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 1995年には南チベットのブータン国境で採集されたパルナシウス属の一種を新種「リキヒロ ウスバアゲハ」(現代表 川崎力宏 にちなみ命名)として発表。研究成果をまとめた10冊の専門書「ウォーレス」を武蔵野昆虫館より出版し、国内外より高い評価を受けました。標本箱300を越える希少な膨大な研究コレクションと、その確かな研究成果で、世界を通用するレベルの日本随一のパルナシウス研究者として有名となりました。

 

川崎裕一パルナシウス蝶オランダ国立自然史博物館 特別展示

 2011年11月、57歳という早さで他界。「いつかはオランダ国立自然史博物館に寄贈し、後世の研究の一助としてほしい」という本人の意向を汲み、交遊のあった自民党 衛藤征士郎 議員の力強いサポートで遺志が叶い、日本郵船のご協力で、標本箱300のコレクションを寄贈することになりました。オランダ王国、ライデン市にある国立自然史博物館は、昆虫標本コレクションは質と量とで世界で5本の指に入り、パルナシウス蝶については世界一を誇る博物館です。この寄贈を記念し、「パルナシウスKAWASAKIコレクション」として、今年2013年3月22日より9月1日まで特別展示されることになりました。展示1ではその様子を実物大に再現しました。

20110214-pic03 川崎裕一は、「蝶の研究家でもある経済人」という個性を放ち、文化人とも数多くの仕事に取り組みました。世田谷美術館で有名な建築家 内井昭蔵 氏(故人)と取り組んだ大分市美術館(大分市)。珪藻土など自然素材を多用し、森と一体化させた素晴らしい建築で、戦後の美術館建築の第一人者と称される内井氏の美術館としての最後の作品となりました。小学校時代、共に昆虫採集をした同級生、菅章氏が館長を務め、応援していたネオダダ風倉匠の個展が開かれるなど、公私共に想い出深いプロジェクトとなりました。

美術館という名の邸宅MUSEE そして亡くなる最期、現代表と2人で取り組んだのが、「美術館という名の邸宅MUSEE」という新商品プロジェクトでした。年間5棟限定、美術館をモチーフに、日常から審美眼を磨くことができる住まいとして発表。その門出を見届けるかのように一週間後に息を引き取りました。ゼネコンとしては異例のマーケティング戦略と、確かな価値が認められ、いくつかの案件が進み着工されました。(銀座レトロギャラリーMUSEEのネーミングは、遺志を継ぐべく、ここに由来しております。)

 パルナシウス蝶の清楚で品格ある鱗粉の美しさに魅かれ研究してきた川崎裕一。美意識の根底にパルナシウス蝶が存在しており、建築の仕事においても多大な影響を与えていたに違いありません。川崎ブランドデザインは「蝶」から始まったと言えるかもしれません。

<追記>オランダ王国ライデン自然史博物館  招待渡欧

 

 2013年8月、寄贈したパルナシウス蝶 川崎コレクション特別展示を鑑賞するため、オランダに渡欧しました。アムステルダムから電車で40分程、運河に風車。まさにオランダと呼べる風景、現代的な建築。そして学園都市の活気に溢れた街、ライデンです。

 日本の外務省の方にも同席いただき、オランダ王国ライデン自然史博物館館長自らがエスコートし3時間かけ、丁寧に館内を紹介いただきました。有名な「アイシュナー博士のコレクションを、川崎裕一コレクションが補完し、世界随一のパルナシウス蝶が集結できた」とご報告いただきました。一般展示のコレクションは標本箱20箱程度。それ以外に寄贈した280箱は、非公開の研究室に納められていました。日本から日本郵船の船便で運び込む際に、ガラスが割れないように貼ったシールも貼られていました。標本に最適な湿度、気温が管理された空間であり、貴重な研究対象として今後末永く貢献できることを確認できました。

 案内の最後には、鳥の専門家である館長が、 トキやドードー鳥の剥製を片手に熱心に語って下さいました。(館長よりシーボルトの魚拓絵画複製をお土産にいただきましたので、ギャラリーで大切に常設展示しております。)

 ライデンは、日本とゆかりのある都市。街の中心地にある「シーボルト博物館」も案内いただき、シーボルトが日本から持ち帰った動植物のサンプル、浮世絵、陶磁器などを鑑賞しました。400年の時を超えた現代、パルナシウス蝶を通じた文化交流の機会を持つことができました。

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