【開廊記念】蝶 ▷ネオダダ ▷建築▷アートがつなぐ。未来。展        <2>建築家 藤本壮介さんによる銀座ビル(GINZA BUILDING)計画

 

【展示2】建築家 藤本壮介さんによる 銀座ビル(GINZA BUILDING)計画

Tower design by Sou Fujimoto, the most sought after architect who has won various international competitions such as the Taiwan Tower Competition. After having worked on his representative HOUSE-N at OITA, Fujimoto is now commissioned to design a new building ;KAWASAKI BRAND DESIGN TOWER with a captivating stairway. You can feel the future of Ginza in his new work.

 
 

House-N1House-N2 台湾タワーのコンペを勝ち抜き、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展では、伊東豊雄の呼びかけにより参加し、金獅子賞を受賞。2013年夏には、英国サーペンタインギャラリーパビリオンを設計。国際的に活躍され、今や注目度No.1の建築家 藤本壮介さん。

 2008年、藤本壮介さんが国際的に注目されるきっかけになった個人住宅があります。それが「HOUSE-N」(大分市)です。住宅街に突如現れる白亜の箱、3層の入れ子という斬新なフォルムで、藤本さんの代表作となり、住宅建築の傑作として高く評価されています。

 

House-N3 House-N4 そのスタイリッシュな外観を支えるのは、極めて複雑な鉄筋構造にあります。計画段階で、九州のあらゆる建設会社・工務店が、その難易度から取り組みを見送るなか、弊社前代表 川崎裕一 が興味を示し施工のゴーサインを出したことで、実現されることとなりました。「個人住宅なので、決して儲かる案件ではない。しかし、85平米という小ささの中に広がる小宇宙、美意識が見て取れた。純粋に面白いと思えた。」 

 建設段階から見学者が途絶えることがなく、竣工後は、国内外で注目の的となります。新建築2008年9月号に掲載され、現代表が偶然目にしたことで、家業に戻る契機になりました。2010年自社企画商品「美術館という名の邸宅MUSEE」を開発する過程でも参考とさせていただき、House-Nのお施主様にもデザインや住み心地に関してのインタビューを敢行。川崎裕一は、引退する間際「どうしても最期にHOUSE-Nが見たい。」と訪れるほど、この住宅への想い入れを持ち続けました。

 

藤本壮介さんと 川崎ブランドデザインタワー計画 川崎力宏

 川崎裕一の逝去後、現代表の判断で、川崎ブランドデザインとして都内で独立。資産運用の観点から不動産事業を検討を開始。高層ビル実現のために容積率の高さと、前面道路の幅員で選定したのが、銀座一丁目にある古いビルの残る土地でした。

 2012年12月、大分でのNouse-N以来、憧れの藤本壮介さんを訪ね、銀座に新築する自社ビル設計を依頼をしました。台湾タワーをはじめ国際的なプロジェクトで多忙ななか、若手スタッフの皆さんとともに快く応じて下さりました。「銀座に相応しい住居兼オフィスSOHOとして、そして住民が共にシナジーを発揮できる新しいスタイルの働き方を提案したい」という当方の難しい要望を汲み取っていただき、1ヶ月という短い時間で素晴らしい基本設計を提案いただきました。

 

 都会の真ん中、60㎡しかない狭小地に、50メートル超の高層建築の構想が模型とCGビジュアルで表現されました。天を目指して階段が前後に取り巻く個性的な外観で、圧倒されることとなります。実現に向け検討を重ねましたが、東日本大震災による人件費や材料費の高騰、採算の課題などが浮上し、一旦保留することとなりました。いつの日か、実現できるよう、研鑽を積んで参ります。

 

SOU FUJIMOTO GINZA BUILDING MUSEE GINZA

SOU FUJIMOTO GINZA BUILDING MUSEE GINZA

SOU FUJIMOTO GINZA BUILDING MUSEE GINZA

SOU FUJIMOTO GINZA BUILDING MUSEE GINZA

その階段には木々が置かれたり、広い踊り場では椅子を置いて休んだりと、

プライベートテラスとして利用することができます。

この階段状の外部空間は各階を分断することなく、

利用者同士のコミュニティーを形成する立体的な路地のような場所となります。

人々の活動やものが表面にあふれ出すことで、

銀座のまちに新しく豊かな表情をつくりだします。

 
 

藤本壮介fujimoto sousuke 模型2藤本壮介fujimoto sousuke 模型1

 

MUSEE開廊記念展で初公開した模型2点を、下記の展覧会(於 GAギャラリー)に貸し出ししました。同時に書籍も発売となり、川崎ブランドデザインタワー(プロジェクト名/銀座ビル)計画も4ページに渡り掲載いただいております。藤本壮介さんの現在が網羅された素晴らしい内容です。

 
 

(以下、GAギャラリーのFaceBook記事より。)

9月21日(土)~11月4日(月)、建築家・藤本壮介の建築プロジェクト展「BETWEEN NATURE AND ARCHITECTURE」が開催される。

藤本壮介は1971年北海道生まれ、東京大学工学部建築学科卒業。2000年に藤本壮介建築設計事務所を設立し、08年に情緒障害児短期治療施設で日本建築大賞を受賞するなど、受賞歴多数。2017年完成予定の「台湾タワー」の設計者を務める。

本展では、屋根がテラスになる住宅「House K」、瀬戸内地方に建設された社宅「せとの森住宅」、これまでも世界各国の名だたる建築家が参加した「サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013」など、藤本が手がけたプロジェクトに関する展示が多数並ぶ。巨大模型、ドローイング、インタビュー映像、そして通常は見ることのできないスタディ模型などの展示を通して、藤本壮介の設計プロセスを追体験することができるのだ。

また、9月25日には展覧会の開催とあわせてプロジェクト集『SOU FUJIMOTO RECENT PROJECT』が刊行。これまでのプロジェクトの数々を紹介するとともに、藤本の「今」が分かるインタビューを掲載する。

展覧会もプロジェクト集も、どちらも藤本の思考に迫れる内容になっている。
世界に活躍の場を広げる藤本壮介の、予想外の一面に出会うこともあるかもしれない。

 

【イベント概要】
藤本壮介建築プロジェクト展「BETWEEN NATURE AND ARCHITECTURE」
日程:2013年9月21日(土)~11月4日(月)
時間:12:00~18:30
休み:会期中無休
入場料:500円
会場:GA gallery 

【書籍概要】
『SOU FUJIMOTO RECENT PROJECT』
9月25日(水)発売
192ページ、3990円

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【開廊記念】蝶 ▷ネオダダ ▷建築▷アートがつなぐ。未来。展         プロローグ〜<1>パルナシウス蝶 川崎裕一コレクション 

蝶 ▷ネオダダ ▷建築▷アートがつなぐ。未来。展

開廊展示 フライヤー表

開催趣旨   ごあいさつ   〜MUSEE 開廊までのいきさつ〜

 MUSEE を運営する川崎ブランドデザインは、九州を代表する建設会社、佐伯建設の持株会社からの独立を経て、今年で法人設立45年、創業から97年を迎えました。

 創業の原点は、東京駅でお馴染みの辰野金吾が設計し、私の曾祖父が施工した 重要文化財 赤レンガ館(大分市)。その後、祖父による宇佐神宮 宝物館(宇佐市)、3年前に他界した前代表 川崎裕一 が指揮した大分市美術館(大分市)。そして藤本壮介さんの代表作 HOUSE-N(大分市)とさまざまな美しい建築に関わり続けた97年間でした。

 3代目の逝去後、私への事業継承が進まず、創業の地  大分を離れ、建設会社の経営から独立を判断。2012年4月、社名、事業目的を変え、新天地・東京でブランディングに特化したアート、企画会社としてスタートさせました。

 建築を愛するDNAに誘われてか、東京銀座に残る一つの近代建築に巡り会いました。この小さな建物は、関東大震災の復興計画で昭和通りが整備された後、昭和7年に竣工されたもの。東京大空襲での戦災を生き延び、高度経済成長以後の不動産開発を逃れ、今日では銀座に残る希少な近代建築として、レンガ調の加飾タイルをそのままに、ビルの谷間に凛とした印象で佇んでいます。

 銀座・昭和通りという商業地にあるため「一旦解体しまずは駐車場にするのが望ましい」という専門家のアドバイスのもと、HOUSE-N(大分市)でお世話なった建築家 藤本壮介さんによる新築高層ビル(14階建て)を計画しました。ところが採算の課題が浮上し頓挫。昭和レトロを醸し出す素晴らしい建築の魅力に気づき、急遽、保存・再生する決意をしました。解体工事を発注した矢先、ギリギリのところで撤回し、建物は保存されました。その後は、私自ら毎日3ヶ月間現場に通い、改修工事を指揮し、2013年6月装い新たにギャラリーとして再生させました。工事中は近隣の皆様に温かい声をかけていただき、この建物がいかに愛されていたか実感することができました。

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 これまでの社歴を振り返りますと、創業の原点である重要文化財 赤レンガ館や、磯崎新さんの処女作として有名な大分市美術館アートプラザ(旧大分県立図書館)は1980年代に老朽化に伴い解体が計画されました。単なる採算や機能性とどまらない、建築の本質を理解し、文化を醸成する価値、審美眼の観点から前代表が自らの意志で、声を大にして保存を地元経済界に呼びかけ、地銀に訴えかけ、署名運動を行い、リノベーションさせ残したという経緯があります。

 97年間の事業、総ての根底にはアートが存在しました。美しい空間、美術を愛する気持ちが、私にも引きつがれ、原動力となり、銀座で80年の歴史を刻んできた小さな建築が保存再生されました。「創造は破壊から生まれる。」建設という仕事に身を置いてきた4代100年を目前に、当たり前に捉えてきた言葉を一旦飲み込んで、敢えて古い建物でどこまでできるか、「アートがつなぐ未来を見てみたい」そのような衝動に駆られました。

 この度のオープニング特別企画展は、3階建ての建築空間全てを利用し、 パルナシウス蝶 ▷ネオダダ風倉匠 ▷藤本壮介さんによるタワー建築という3つの領域を、根底に流れるアートが未来へつなぐ様を表現します。

 80年の歴史を刻む建築空間の中で、アーティスト、ご来場頂くお客様とともに、未来へ向けた時間を「共創」する美術館=MUSEEが完成しました。アートが人々の輪をつなぎ、人生が少しでも豊かな方向に向かうお手伝いができれば幸いです。皆様に親しまれる、これまでにない新しい価値観を持ったギャラリーを目指し努めてまいりますので、何とぞ格別のご支援、お引き立てを賜りますようお願い申し上げます。

 

川崎ブランドデザイン有限会社 代表取締役

 川崎力宏

 

【 展示1】 パルナシウス蝶  川崎 裕一コレクション オランダ国立自然史博物館 特別展示 再現

 

Yuichi Kawasaki, the leading global researcher on Parnassius butterfly and former representative, donated his approximately 10,000 research collection to the Netherlands National Museum. The current exhibition not only recreates the Netherlands Special Exhibition in full-scale but also includes precious new varieties. Preserving the famed building in an effort promote the Kyushu economic community, the event will also introduce the milestone of building the gallery.

 

川崎裕一

川崎裕一 自ら発見した新種パルナシウス蝶とともに

 九州を代表する建設会社 佐伯建設4代目社長として、九州の経済界で活躍した川崎 裕一。日本青年会議所の九州代表を経験し、その後は地方都市のあり方を中心に、経済同友会をはじめ様々な提言を行ないました。オピニオンリーダーとして活躍した多忙な業務の間、日本蝶類学会会員として、自宅の一室にある研究室にて、プライベートで蝶類の研究家としての側面を持ち合わせていました。

 きっかけは、小学生1年生の夏休みの宿題で行なった昆虫採集、標本作成。趣味がエスカレートし、昆虫研究会が有名なことで志望、入学した慶応義塾大学在学中から、アジアを中心に渡航し、蝶類の採集、標本作成を手がけました。その後、欧州からヒマラヤ、日本、北米にかけて北半球の高山地帯にすむアゲハ蝶の一種である、パルナシウス蝶の分類学に専念し、ヨーロッパの博物館など世界各地から取り寄せた標本を調査、研究を精力的に行ないました。

 

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 1995年には南チベットのブータン国境で採集されたパルナシウス属の一種を新種「リキヒロ ウスバアゲハ」(現代表にちなみ命名)として発表。研究成果をまとめた10冊の専門書「ウォーレス」を武蔵野昆虫館より出版し、国内外より高い評価を受けました。標本箱300を越える希少な膨大な研究コレクションと、その確かな研究成果で、世界を通用するレベルの日本随一のパルナシウス研究者として有名となりました。

 

川崎裕一パルナシウス蝶オランダ国立自然史博物館 特別展示

 2011年11月、57歳という若さで逝去。「いつかはオランダ国立自然史博物館に寄贈し、後世の研究の一助としてほしい」という生前の意向を汲み、交遊のあった自民党 衛藤征士郎 議員の力強いサポートで遺志が叶い、日本郵船のご協力で、標本箱300のコレクションを寄贈することになりました。オランダ王国、ライデン市にある国立自然史博物館は、昆虫標本コレクションは質と量とで世界で5本の指に入り、パルナシウス蝶については世界一を誇る博物館です。この寄贈を記念し、「パルナシウスKAWASAKIコレクション」として、2013年3月22日より9月1日まで特別展示されることになりました。MUSEEの1階、展示1ではその様子を実物大に再現しました。

20110214-pic03 川崎裕一は、「蝶の研究家でもある経済人」という個性を放ち、文化人とも数多くの仕事に取り組みました。世田谷美術館で有名な建築家 内井昭蔵 (1933-2002)と取り組んだ大分市美術館(大分市)。珪藻土など自然素材を多用し、森と一体化させた素晴らしい建築で、戦後の美術館建築の第一人者と称される内井昭蔵 の最後の大型公共建築です。オープン後は、小学校時代に昆虫採集をした同級生である菅章 氏が館長を歴任、応援していた「ネオ・ダダ」風倉 匠 の個展が開かれるなど、公私共に想い出深いプロジェクトとなりました。

 

美術館という名の邸宅MUSEE そして亡くなる最期、現代表と2人で取り組んだのが、「美術館という名の邸宅 MUSEE」という新商品プロジェクトでした。年間5棟限定、美術館をモチーフに、日常から審美眼を磨くことができる住まいとして発表。その門出を見届けるかのように一週間後に息を引き取りました。ゼネコンとしては異例のマーケティング戦略と、確かな価値を評価いただき、いくつかの案件が進み着工しました。(MUSEEのネーミングは、遺志を継ぐべく、ここに由来しております。)

 パルナシウス蝶の清楚で品格ある鱗粉の美しさに魅かれ研究してきた川崎裕一。美意識の根底にパルナシウス蝶が存在しており、建築の仕事においても多大な影響を与えていたに違いありません。川崎ブランドデザインは「蝶」から始まったと言えるかもしれません。

現地メディアでの紹介

De vlinders van Kawasaki

https://www.artifex.nu/agenda/1594/2247/Exposities,-Kunstcollecties,-Musea-&-Lezingen-/do-21-maart/23:00/Vlinders-van-Kawasaki-in-Naturalis.html#.WirHMrSFiXQ

https://www.museumkaart.nl/museum/Naturalis/Vlinders+van+Kawasaki+.aspx

https://www.naturalis.nl/nl/over-ons/nieuws/blogs/museum/naturalis-in-bezit-van-grootste-collectie-apollovlinders/

クリックしてLeidsch-dagblad.pdfにアクセス

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追記   オランダ王国ライデン自然史博物館  招待渡欧

 

 2013年8月、寄贈したパルナシウス蝶 川崎コレクション特別展示を鑑賞するため、オランダに渡欧しました。アムステルダムから電車で40分程、運河に風車。まさにオランダと呼べる風景、現代的な建築。そして学園都市の活気に溢れた街、ライデンです。

 日本の外務省の方にも同席いただき、オランダ王国ライデン自然史博物館館長自らがエスコートし3時間かけ、丁寧に館内を紹介いただきました。有名な「アイシュナー博士のコレクションを、川崎裕一コレクションが補完し、世界随一のパルナシウス蝶が集結できた」とご報告いただきました。一般展示のコレクションは標本箱20箱程度。それ以外に寄贈した280箱は、非公開の研究室に納められていました。日本から日本郵船の船便で運び込む際に、ガラスが割れないように貼ったシールも貼られていました。標本に最適な湿度、気温が管理された空間であり、貴重な研究対象として今後末永く貢献できることを確認できました。

 案内の最後には、鳥の専門家である館長が、 トキやドードー鳥の剥製を片手に熱心に語って下さいました。(シーボルトの魚拓絵画複製をお土産にいただきました。)

 ライデンは、日本とゆかりのある都市。街の中心地にある「シーボルト博物館」も案内いただき、シーボルトが日本から持ち帰ったという動植物のサンプル、浮世絵、陶磁器などを鑑賞しました。400年の時を超えた現代、パルナシウス蝶を通じた文化交流の機会を持つことができました。

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