【日時】2023年12月1日〜24日の(金・土・日)13:30-16:00 ※週末12日間の開催
【場所】MUSEE GINZA_KawasakiBrandDesign 東京都中央区銀座1-20-17川崎ブランドデザインビルヂング【料金】入館無料
【関連イベント】2023/12/2(土)15:00~15:30 ギャラリートーク「対談 村上貴一 × 川崎力宏」定員 10 名
概要
関東大震災の復興建築として竣工し、東京空襲を生き延び、91年の永きに亘り銀座の街を見つめてきた川崎ブランドデザインビルヂング(旧五十鈴商会)。老朽化で解体が決定していましたが、2013 年当社が取得、保存する判断を下しMUSEE GINZAギャラリーを開廊し早いもので10年が経ちました。
鉄筋コンクリート造の黎明期における木床との複合構造、スクラッチタイルの変種、加飾タイルの美しい外観、銀座の商業建築ビルの先駆けとして評価され、現在は国の有形文化財登録に向けて中央区と準備を進めています。
2023年12月、MUSEE GINZAの新施設となるアートコンテナを、千葉県南房総市に新築しました。銀座ギャラリーのアネックスとして、現代アート作品の保管を中心に、プライベート展示、取引の場として活用する斬新なファサードの現代建築となりました。本展では、試行錯誤を経て実現したアートコンテナのプロジェクトを初公開します。
開催趣旨
コンテナは海上輸送の国際規格であり洋上・湾岸から幹線道路までを網羅しています。世界の物流、経済の血液のような存在であり、当社の国際志向と合致したため躯体・ファサードとして採用しました。2つのコンテナを斜めに重ね、古神社の崖から、館山の海を臨む単眼鏡のような斬新なファサードは、既存の視野を転換(ツイスト)させ、未来眺望を促します。現代建築としての剛性ある存在感を放ちます。
MUSEE GINZAのアートコンテナ計画は、ゼロから新築する計画で、店舗デザインを始め国内で引き手数多のプロジェクトが進行する建築士の村上貴一さんと協同で約2年かけて実現しました。かつて安房の国と呼ばれ、鎌倉時代の城跡など歴史遺産が残る立地で、古神社の森林と崖に隣接する国道127号線沿いの狭小地に、最先端を感じる斬新なアートコンテナが出現しました。
辰野金吾の銀行建築から創業し、磯崎新モダニズム建築を保存してきた当社106年の社歴、所蔵する現代アート(前衛美術集団ネオ・ダダに所属した風倉匠、現役アーティストの山口歴)の魅力をいかに引き出すか等、無理難題を要望し、懇切丁寧な対話をしていただき、徐々に形を見つけていく作業を経て完成しました。本建築展では、本プロジェクトの過程となった模型、竣工写真などを公開します。建築=造形物をどのように手探りしていったか、そのプロセスをお楽しみください。
『faceting(ファセッティング)』
『faceting(ファセッティング)』とは、宝石加工に用いられる言葉で、原石を磨いていく過程で小さな平面を作りながら多面体に仕上げていく工程を示します。建築計画のプロセスにおいても、周辺環境やお施主様のご要望 などの与条件を敷地に当てはめながら、建築のあるべき姿を立体的に削りだしていく過程が『faceting』と通じるように感じます。
今回のアートコンテナプロジェクトでは、出入りする人の動きやアートの搬出入に関わる車両の軌跡を丁寧につむぎ、そのふるまいの形跡から1階の形が削りだされました。また、隣地の古神社からせり出す樹木と海を臨む方角とが、2階の向きを決定付けています。結果として、コンテナがツイストした個性的な外観と内部には高低差のある多様な空間、クリスタルのような形状の階段が生まれました。必然的に生まれた質素とも言える装飾のない合理的な形状は、内部に飾られた美しくも恒久的な価値を放つアートと対比され、お互いを引き立たせ合い、輝きを放っているように感じました。まるで鉱物を内包するジオードような建築となりました。その一部を感じていただけますと幸いです。
村上 貴一
村上貴一 眼鏡のまち福井県鯖江市生まれ。設計事務所勤務を経て村上貴一一級建築士事務所設立