World MUSEE Tour 世界ミュゼ探訪006 世田谷美術館

世田谷美術館は、四季折々の変化が美しい、緑豊かな砧公園(東京都)の一角に位置するアートファンにはお馴染みの美術館のひとつです。

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都会のオアシスとも言える恵まれた自然環境の中で、芸術とは何かという根源的なテーマのもと、分野に偏らず幅広い視野で企画される展覧会や催しを通じ、芸術との出会いを提供してくれています。

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戦後の日本建築史を代表する建築家の一人である内井昭蔵氏(1933-2002)の代表作として知られており、公共建築100選に選ばれ、第45回日本芸術院賞、第28回BCS賞、第27回毎日芸術賞を受賞するなど高く評価されています。

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世田谷美術館を設計するにあたり内井氏は、公園の中にある美術館であることを強く意識し、随所で人々が自然と関わるための仕掛けを施してくれています。「周辺環境を考慮した公園美術館にすること」「美術館という空間を日常化すること」「美術以外の多彩なジャンルの表現を受けいれることを可能とするオープンな空間を構築すること」という3つのコンセプトが掲げられ設計されたそう。

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公園の高い木々に埋まるように有機的な平面形状で展開され、統一された正方形の凹凸でコンクリートに表情を生み出し、正三角形のトラス状の柱を共通モチーフとして多用するなどの装飾豊かなディテールも特徴的です。1986年に開業し、当時大きな話題を集めました。

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20世紀最も偉大な建築家フランク・ロイド・ライトの、建築だけでなく家具や造園まで手掛け、装飾美術を建築に融合させる手法、とりわけアリゾナ州ビルトモアホテルの外壁にみられる、その土地個有のパターンをモチーフにした外壁(コンクリートテキスタイル)に感化され、試行錯誤の中生み出されたのが、この美術館の外壁を飾る石器質の穴あきタイルなのです。

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それを7m×2mという外壁PC板に打ち込み、PC板間の目地を隠すという工夫も。市松状のタイルは表面をブラストし、硬い表情を柔らかくし、いかに光を受けとめて光を砕くかという建築的な考察がされたとのことです。装飾性豊かな外壁もこの美術館の大きな特徴です。

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内井昭蔵氏が著した「健康な建築」の冒頭で「健康とは〈生きているもの〉の価値基準である。人は病んだとき初めて健康の喜びや健康の価値を知るのであるが、このごろの建築をみていると、つくづく健康な建築の必要性を感じる。最近の建築はどこか病んでいるようだ。人間と建築とを同一に考えることはできないが、健康という価値基準を建築にあてはめることはできると思う」と記しています。内井昭蔵氏の建築家としての思想を端的に示し、その造形が生成されていく根源を表現した言葉だと、感じました。

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明治時代、正教会の建築を手がけた祖父・河村伊蔵、ニコライ堂イコノスタスの設計に携わった建築家・内井進を父にもつ内井氏は、建築家として1967年に師事した菊竹清訓から独立しキャリアを積み、2002年に逝去されるまでの35年間、約250の建築作品を手がける一方、京都大学などで後進の指導にもあたり、日本の建築界に多大な貢献をされています。

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初期の代表作「桜台コートビレッジ」(1970)をはじめ、「身延山久遠寺宝蔵」(1976)、「浦添市美術館」(1990)、「御所」(1993)、「高岡市美術館」(1994)と、国内の公共建築に携わり、001でご紹介した「大分市美術館」(1998)で美術館建築としての完成形として結実を迎えます。その優れた建築は、今もなお国内外から高い評価を得て、訪れる多くのアートファンに親しまれているのです。

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内井昭蔵氏は建築に合理性を求めるだけでなく、自然の秩序を意識し、そこから生じてくる装飾を丹念に建築に取り込み、建築が人間にとって親しみやすい存在であることを思い、人間と建築が馴染みあう空間を築くことを、心から大切にした建築家です。

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地球規模で環境問題を考える局面を迎えた昨今、改めて着眼するに値する内井昭蔵氏の「自然の秩序」。砧公園の木々とともに生き、建築が歳月をかけ年輪を重ね、周辺環境と呼応し風格を生んでいる。その設計思想が如実に現れた世田谷美術館は、開館20年を経ても私たちの心を揺さぶってやみません。

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2012年にはリニューアルされ、バリアフリー化され、中庭には新しいカフェも新設されました。庭園では、抽象彫刻家 安田春彦氏の「赤錆の壁がある砦」が存在感を持って鎮座していますので、こちらも忘れずにご覧下さい。

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